解体―国際協力銀行の政治学
草野 厚

定価: ¥ 1,890
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発売日: 2006-12
発売元: 東洋経済新報社
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水と油
著者は国際協力銀行の国際金融部門と円借款部門の性質の違いを強調し、元々「水と油」の統合だったので分割するのが当然であるという趣旨の主張をして、関係者の政治的動きを記述している。著者自身が認めているように、関係者の主張がバランスよく反映された客観的な記述ではなく、結論ありきで議論が展開されているようだ。
二つの部門がそれほど違うのか、という点は既に前提とされており、読んでいてもよくわからない。例えば日本企業の海外進出は進出先の国の経済開発にとってもプラスではないのか。また、会社組織の中に中間目標の異なる部門があることはそんなにおかしな話ではないので、組織融合の問題は基本的に組織形態ではなく経営の問題ではないのかといった疑問も生じる。特に世界の中で今後日本がいかに生き残っていくのかという視点が殆どないので、本書を読んでも一連の改革が何を目指しているのかがはっきりしない。
読んでいて印象的なのが、関係者の議論がポストの数等の組織論や天下り等の問題に終始しているように描かれていることだ。著者の動機も円借款部門の取扱いに関する「義憤」であると書かれており、本書において政策的な観点での議論の展開は不十分であるように感じる。組織を統合したり分割したりするためのコストは、納税者が負担することになる訳だが、コストと便益について本書を読んでも十分な説明は得られない。
ごく最近の出来事を扱っているためかもしれないが、関係者のやり取りもぼかされているようで、政治過程の描写という意味でも中途半端な感が否めない。この本により一連の出来事の流れを追うことが出来るという意義はあろうが、著者が推進している政策の正しさやより詳しい政治過程の描写は一定期間を経た上での客観的な評価が必要なのではないか。
政策と政治の間がよくわかる
著者が言いたいことは次のようなことらしい。よい政策が必ずしもそのまま
実現するわけではなく、政治家、官僚などによる「よい政策」の競い合いという
政治(権力闘争)である。よくいわれる見方だが、それを政策決定の現場に肉薄して
証明している作品は少ない。本書は、長期にわたる政治過程を綿密な取材で再現する
ことで、その目的を達成している。後半のほうで驚かされるのは、政治家がここまで
深く国際協力銀行の解体劇に関与している点だ。それにしても、本書が改革派関係者の
リークもあって完成し、その関係者が処罰されてしまうとは、何とも皮肉だ。残念だが、
安部内閣がこの小泉改革を受け継いでいないこともよくわかる。難をいえば、副題
国際協力銀行の政治学だ。「政治学」というよりは「政治」のほうが誤解を招かなくてよい
のでは。従来の政治学を基準にすれば、外れているとの批判はあるかもしれない。